展示会のご報告

第102回うるしの会 八木繁・茂樹展

第102回の「うるしの会」は八木繁さんと茂樹さん親子の作品展です。初めての親子展ということで、お二人には個性あふれる多彩な作品を出していただきました。今回の展示会は、早くから、お客さまに多数お申し込みいただき、全席がすぐに満席になりました。例年にない寒さにもかかわらず、会場に足をお運び下さったお客さまには、心からお礼申し上げます。そして、二日間の会期が盛況のうちに終了できましたことを、作家ともども嬉しくおもっております。

「会場風景」「食事風景」
龍雲庵二階の室内には作品を並べ終えて、お客さまを迎える準備が整いました。八木さんのお話のあとは、作品に盛られたお料理を楽しんでいただきました。

『八木繁さんと茂樹さん』

 八木繁さんはうるしの会、8回目の登場。今回はご子息の茂樹さんとお二人による、親子展を企画しました。残念ながら、茂樹さんには会場にお越しいただけなかったのですが、仕事場を同じくする繁さんが、作品を詳しく解説して下さいました。 八木さんは、石川県山中温泉で漆器作りを生業にする伝統ある八木家の三代目。棗作りの名人だった先代から受け継いだ確かな技術と、ご自身が持つ豊かな感性から生み出された棗や香合は高い評価を得ています。さらに、20年前からは、本業とは別に、「自らが作りたいと思うもの」を作り始められました。これは、まず器のデザインを起こし、高度な轆轤の技術を持つ地元に木地を発注します。 その後、下地作りから上塗りまでのすべての工程を、八木さんがお一人で行うものです。独自の境地から生まれた「見て美しく、しかも使いやすい漆器」の数々は、八木さんが住む山中塗の産地にも新しい風を吹き込んだことでしょう。

「八木繁さん」
自作の漆器に盛られたお料理を前にした笑顔の八木さん。

この父の姿を見て育った茂樹さんは、輪島漆芸研修所で学んだ後に、茶道具の工房に弟子入り修業をしたのち、現在は4代目として八木家を継いでいます。「棗も作るし、お椀も作る。そして自分のやりたいこともやる。」これをポリシィにする茂樹さんは34才。乾漆を中心にして、さらに色漆を用いた多彩な作風が特徴です。この作品の数々を父親の繁さんは「色使いに若い感性が出ている。」と評します。まさに、山中に誕生した次代の担い手です。

『八木さんのお話から』

八木さんは、棗・香合作りの名手としての立場、そして、日々の暮らしに使う漆器の作り手としての立場から、ご自分の思いを語ってくださいました。今回の展示会には、新作を含め30個以上の棗・香合を出して頂いています。それらが別室にずらりと並んだ眺めは壮観で、年一度のお披露目を楽しみにして下さる茶道のお客さまは勿論のこと、ご覧になった方々もその見事さに感激されていました。そのお客さまの一人一人に、制作意図を詳しく説明をして頂きました。さらに、実物を前にして、棗作りの工程の解説をお願いしました。

八木さんは

  • 木地は『骨』
  • 地の粉の入った下地は『肉』
  • 下塗り・中塗りは『下着』
  • 上塗りは『上着』
  • 蒔絵は『アクセサリー』

に例えて、漆器の構造をわかりやすく解説してくださいました。 棗の木地は山中独自の技術で挽いた薄挽きです。この『骨』のままだと、木地は驚くほど薄く、蓋と本体には隙間があって、手で持って振るとカタカタ音がします。 それに木地で『肉』を付けると木地は厚みを増して、蓋はぴたっと収まります。このことを八木さんはサラリと簡単におっしゃいましたが、実はそのころ合いが大変難しいのです。名品とされる棗・香合作りに求められるのは、外観だけでないことを教えていただきました。 続いて、「作りたいもの」について、工房での日々の様子を交えて語られました。 八木さんのお宅では自作の漆器を日常に使用し、その使い勝手や耐久性を確かめるそうです。だから「丈夫にしたいなら漆を重ねて塗る、持ちにくいならば、高台を広くしたり、筋をつける。」などの改良を加えるとのこと。作り手だからこそできる工夫の数々といえるでしょう。 ここから生まれたのが、筋目模様のついた湯飲みです。まず、漆に地の粉を混ぜた下地を木地に塗り付け、それが乾かないうちに指で筋をつけていきます。そのあと、上塗り。 縦、横にはいった筋がアクセントになってデザインとしても面白く、そして、筋目には握ったときに指がうまく引っかかって、滑りにくくする働きがあります。

「フリーカップとスプーン」(八木繁作)
雛あられを浮かべた葛湯。

長時間持っていても熱が伝わりにくい漆器の特性を生かして、この湯飲みはコーヒーやスープにも使って欲しいとのこと。「筋目があることで、手が滑って落とすのでは、という不安を消して『安心感』を与える。」と言う、見た目の効果にも八木さんは触れます。「酔っ払ってもすべらないので、酒器に最適。」というお酒好きの友人の評判だそうです。八木さんは知る人ぞ知る篠笛の名手です。過去のうるしの会でもその音色をご披露していただきました。今回も篠笛を期待していらしたお客さまがおいでになりましたが、時間がとれず残念でした。次回をお楽しみになさってください。

『八木茂樹さんの作品(繁さんの解説)』

葉脈皿・・・、山中の野山に自生するサンキライとモクレンの葉脈を使った乾漆の皿。 一枚、一枚、形と大きさが少しずつ異なってまさに自然からの贈り物です。 盛器・・・乾漆ならでは自由な形状の作品です。麻布に和紙を重ねることで、器の表面に味のある凹凸をだしました。

「乾漆和紙張器」(八木茂樹作)
おもたせの山中温泉名物のおかしを入れて、盛り器として。

『龍雲庵・後藤紘一良先生のお話』

「漆器を作られた八木先生の制作意図と、一年で一番寒いこの時期なので、温かいものをより温かく、という漆宝堂さんからのご希望にそって献立を立てました。」とおっしゃった後藤先生に、器使いとお料理の説明をしていただきました。

「後藤紘一良先生」
食事の後には後藤先生がお料理や食材のお話をしてくださいました。

『フリーカップ』・・席に着かれたお客さまにまず差し上げる一品として、雛あられを浮かべた葛湯をいれました。次に芽キャベツ、新じゃが、にんじんなどのスープ煮をいれて温野菜の器に使いました。筒型の器なので、少し時間をおいても冷めずに美味しくいただけます。

「フリーカップ」(八木繁作)
温野菜を入れました。

『飯椀(新作)』・・旬の鯛ご飯を入れました。桜鯛は一匹を姿ごと土鍋で炊き、身をほぐして、ご飯とともに盛りつけます。

土鍋で炊き上げた鯛ご飯鯛の身はほぐしてからご飯に混ぜます。
「鹿の子 飯椀」(八木繁作)
鯛ご飯にはサンショを添えて香り高く。

『八寸皿』・・朱、黒の八寸皿を使った盛り合わせ。皿の色が異なるとお料理の映り方も違い、それも器使いの楽しみの一つです。ひな祭りの菱餅を模した菱形真蒸(しんじょ)が盛り、季節感を添えました。

『蓋付き椀(新作)』・・シャープな形の椀には、桜鱒の粕汁を入れました。蓋があるので温かさが保てます。しかも蓋をあけると酒粕の香りが広がり、美味しさが倍になるはずです。

「栗大皿」(八木繁作)旬の食材が美しく調理され、「美味しそう」
色違いの皿が盛り合わせの器になりました。と八木さんも思わず写メでパチリ。奥さんにお見せになるそうです。
左「わくわく椀(フタ付)」右「フリーカップ」共に八木繁作
温かい料理を冷めずに召し上がっていただきました

■次回展のご案内

箱瀬 淳一展

  • 日時:平成24年4月18日(水)、19日(木)
  • 場所:東京