展示会のご報告

<第101回 佐川泰正展>

平成24年度の「うるしの会」の始まりは、1月恒例の佐川泰正さんの作品展からです。
さて、この「うるしの会」は会を重ねること、今回で101回。まさに新世紀の幕開けです。
さらに嬉しいことに1月25日付の東京新聞が「漆器で豊かな食卓を」の見出しで、この「うるしの会」を紹介して下さいました。 私ども漆宝堂の28年の歩みと「うるしの会」への取り組みの記事には多くの反響があり、今回の佐川展にもたくさんの方からお申し込みを頂きました。 しかし、会場の席が限られていたこともあって、申し込みの皆さまのご希望にそうことができず、誠に申し訳ございませんでした。 お礼とともに心よりお詫び申し上げます。そして、是非とも、次回以降のご参加をお願いいたします。


食事会の風景 ずらりと並んだ漆器とお料理

『佐川泰正さんと檜椀』

佐川さんは作家歴30年。木地づくりから仕上げまでお一人で制作されています。 その丁寧な仕事には定評があり、都内有名百貨店の三越さんや高島屋さんの特選売り場でも佐川さんコーナーが設けられています。
漆宝堂とのおつきあいは、今回まで8回の個展をお願いし、「毎年1月の佐川展」を恒例にさせていただいています。 佐川さんご本人を囲み、お客様に作品をお見せできるのが私どもの「うるしの会」だけなのも、そのご縁があればこそです。
今回は少し趣向を変えて、佐川さんの代表作の一つであり、漆宝堂オリジナルのヒノキの木地でつくった檜椀にスポットをあててみました。
さて、この檜椀、「暮らしの手帖」の編集長の松浦弥太郎さんが自著の「日々の100」で紹介していらしたり、「四季の味」の誌上でも幾度も取り上げて下さいました。(こちらをごらん下さい。) 販売開始からすでに6年。汁椀や飯椀として愛用されている方も多いと思います。
そうしたお客さまのお一人から「もっといろいろな使い方ができないかしら?きっと出来るはずなので、漆宝堂さん、考えて。」の宿題をいただきました。そこから生まれたのが今回の『檜椀の多用つかい』という企画です。 これを、皆さまが器つかいのヒントにされてくださると嬉しいかぎりです。

『佐川さんのお話から』

「一番肝心なものは、目に見えない。」と自作を前にして佐川さんは語ります。ヒノキの木地の珍しさが注目されがちな檜椀ですが、従来の椀作り以上に手のかかる工程を経ています。 しかし、出来上がってしまうと、隠れた下地は見ることはできません。堅牢な作りを知っていただいたら、お客さまもより安心して使って下さるだろうと、佐川さんはあえて苦労話を披露してくれました。
轆轤目をつけた木地のデザイン決めに時間を費やしたこと、檜の木地が驚くほど漆を吸い込み、その吸収されたたっぷりの漆が木地を丈夫にするのではないかと思うこと、などなどを工程ごとの椀をいくつも取り出して、解説してくださいました。 そして最後に出されたのは使い込んだ艶やかな朱の檜椀。初めて取り組んだ仕事には不安が残るので、最初に作った一個を手元において、6年間、毎日家で使っているそうです。結果、ご自身でも満足のいく出来だったのでしょう。 ベストセラーの檜椀を制作し続けている佐川さんの自信の源を、見せてもらった気がしました。
こうしたお話を、「うるしの会」にご参加いただいたお客さまは興味深くお聞き下さったご様子でした。
特に今回は、上塗りを朱と黒のいずれから選べるとあって、新規に、そして、追加用にと檜椀をお求めくださるお客さまが多くいらっしゃいました。


お話をする佐川さん

『檜椀の銘は?』

佐川さんの作品の銘は『泰』。しかし唯一異なる銘がはいるのが檜椀です。
それにはこんな訳があります。
私ども漆宝堂はかつて椀として最高級だといわれたヒノキの木地の椀を平成の世に復活させたいと願っていました。 そして何度も工房に訪ね、佐川さんにヒノキのお椀の制作をお願いし、引き受けていただきました。 その経緯を踏まえて、「新た」に創造するという思いの『新』、そして、おこがましいのですが、私たちの氏名の「服部新一郎」と「新部正人」の『新』をとって銘にしてもらいました。 本来ならば『泰』と『新』の二文字が入るべきですが、佐川さんは「檜椀は漆宝堂さんのオリジナルだから」と『新』のみ銘にし、『泰』のものは作らないと明言されていらっしゃいます。
どうぞ、檜椀をお求めいただいたら、裏の銘にもご注目ください。


檜椀の銘 “新”

『龍雲庵のお料理』

今回の展示会の趣旨を汲んで、龍雲庵の後藤紘一良先生がご提案くださった多用な椀つかいをご紹介いたします。

お椀三種
一、胡麻どうふ わさび旨出し汁
一、汁かけごはん とりそぼろ 海老そぼろ 玉子そぼろ 針のり 木の芽
一、鍋の取り鉢
(龍雲庵のお品書きから)

このほかに、佐川さんお持たせの福井大野の「いもきんつば」をのせて、菓子椀としても、檜椀を使ってくださいました。


檜椀 菓子椀として

胡麻とうふは仙崖和尚が描くところのにならって三つの形に切り分けて、一切れずつ盛つけて下さいました。
丸い椀にアクセントがつき、食卓にリズムが生まれます。


檜椀 小鉢として

温かい汁をかけていただく汁かけご飯には、檜椀がぴったり。
手にすっぽりと収まる形と、口辺の口当たりの良さが、お料理の味をひきたてます。


檜椀 飯椀として

季節の魚の真鱈が入った鍋は、龍雲庵の若主人が取り分けて下さいました。
取り鉢といえども美しく盛りつける技はさすが。


檜椀 取り鉢として

丸盆、角盆を大皿として用いた盛り合わせ。ふきのとう、酒蔵から届いた酒粕など旬の味が並び、空豆を入れた大根の枡が、少し早い節分を感じさせてくれました。


おもてなし盆 溜 「盛り合わせ」

新作の大鉢はサラダの器に。椀の深さに合わせて、ドレッシングをいれたグラスを埋め、おしゃれな演出をして下さいました。


5.7寸面取鉢 溜 サラダを入れて

※季刊誌“四季の味”の冬号(H.23.12月発売)に「箱瀬特別展をお客様の佐藤様宅にて開催した様子」が掲載されています。
ぜひご購読下さい。

■次回展のご案内

箱瀬 淳一展

日時:平成24年3月23日(金)、24日(土)
場所:大阪